第60回
子どもが自立して生きていけるために幼児期のしつけはゆったりとした時間のなかで丁寧に
加藤 由美子(かとう ゆみこ)先生
新潟青陵幼稚園園長。

親子の信頼関係があってこそのしつけ時間がかかってもあせらずに
 洋服を作るときの仕付け糸を思い浮かべてみましょう。仕付け糸は弱すぎず強すぎず布をとめることが肝心です。跡は残らないけれどしっかりととまっているから本縫いを始められるのですが、子どものしつけも同じことがいえると思います。いつもお子さんの思いをきいて受け入れてあげることで親子間の信頼関係ができ、親はお子さんが安心して依存できる存在になっていきます。基本的にそのような関係ができていれば、親としての願いを言ったときにお子さんは受け入れてくれる、そこで初めてしつけができるのです。
 ただし小さなお子さんのしつけにはとても時間がかかりますし、同じことを何度も繰り返し話さなくてはなりません。子どもも人格を持った一人の人間だということを忘れずに、自分の理想を押しつけず、親として気長に「待つ」ことが必要ではないでしょうか。

最初はお母さんも一緒に子どもの「伸びようとする力」を信じて
 大人は強い立場にあるので、普通に言っても子どもには「しなさい」という命令に聞こえてしまいます。ましてや大人の力でやらせるのは自立ではなくて、他立。本来、しつけは子どもが自分の力で立つようにしてあげることですから、怒ったり無理やりやらせるのではなく、時間をかけて丁寧にやっていかなくてはなりません。
 生活習慣を身につけさせたいと思ったら、子どもは真似をするものですから、トイレも歯みがきもお母さんが一緒にやってお手本となりましょう。「できるようになったかな」と思ったら少しずつ手をひいていけば、一人でできるようになるものです。
 子どもは自分で伸びようとする力を持っています。「こうなってほしい」と願うのは大事ですが、信じて見守り、伸びようとする力を十分に使えるようにしてあげてください。もしも失敗しても責めずに理由を聞いてあげて、自分でやろうとしたそのことを認めてあげてほしいと思います。お子さんが自己肯定感をもてるようになるためにも大事だと思います。

早く早く!と急がせないで子どものリズムに合わせてゆったりと
 もう一つ大切なことは、急がせないということです。子どもは早く早く!とせかされると、一生懸命にやってきたことを消化しきれずに、できなくなってしまうことがあります。この消化する時間が子どもにはとても大事なのです。ものすごくゆったりと流れていく子どもの時間を意識して、「いいよ」と待ってあげるゆとりをつくってあげれば、子どもは「あんなことも、こんなこともしたい」と意欲を持って自分からやれるようになります。
 厳しくしないと子どもは自立しないと思っている方も多いようですが、支えてくれたり受け止めてくれる人がいないと感じれば、心が折れてしまうことがあります。逆にいっぱい愛されているという大きな土台があれば、何かあっても倒れません。厳しさも必要ですが、最初にやさしさや楽しさをたくさん経験していれば、その厳しさの向こうに楽しさがあることを信じられるのです。


■しつけをする前に、親子の信頼関係を築こう。
■子どもの人格を大切にして「待つ」ことが大事。
■生活習慣はお母さんが見本。あとは子どもの伸びようとする力を信じる。
■子どものゆったりとした時間を大切にして急がせないことが大事。
■厳しさは、やさしさや楽しさの後に。



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