第47回
うまい・へたの評価をするのではなく、お子さんがお絵かきをとおして心情を自由に表現し、楽しめるようにしましょう
幸田 顕(こうだ あきら)先生
新潟青陵大学短期大学部幼児教育科教授。

遊びをとおしての経験が豊富であればあるほど感情が豊かになり、美的情操もはぐくまれる
 子どもは本能的に「何かを表現したい」という気持ちを持っています。ただそれは突然現れるものではなく、さまざまな遊びをとおして情緒感がはぐくまれ、大きな感動となって出てくるまでの「表出(ひょうしゅつ)」というプロセスを経て芽生えてくるものです。
 お子さんは遊びのなかで自問自答を繰り返しながら、いろいろな発見をしていきます。例えば砂遊びでトンネルやおだんごをうまく作れなくて悩んだとしても、数日後に雨上がりの砂場で作ってみて、ぬれているとうまく作れることを発見するかもしれません。このような知的経験を積み重ね、頭の中に入れること(頭的経験)で、今度は手や体を動かして自分のイメージを生み出していけるようになる、つまり心的経験に展開していくのです。
 経験が豊富であればあるほどお子さんの感情表現は豊かになり、お絵かきなどの造形に必要な美的情操もはぐくまれていきます。たしかに最近の子どもたちは、年配のみなさんのように自然のなかで遊びをとおして学んでいくことが少なくなってはいますが、現代の遊びやアニメーションなどは実にテーマが豊富ですし、色彩も豊かです。お子さんとコミュニケーションをとりながら、これらを良い形でお子さんの生活や成長に生かしていけるのではないでしょうか。

絵の技術だけでなく、お子さんが絵に表現したかったものや心情を見てあげてほしい
 美しいものを求め美しいものに感動をおぼえるという心情はみんなが持っています。子どもも同じで、それをお絵かきなどで表現しようとします。そこで私たち大人は子どもの絵を、どのような視点で見たらよいでしょう?  例えば同じ4歳児の絵でも、その表現力には違いがあります。日本ではお手本教育が浸透していたために、どうしても「うまい・へた」という感覚で見てしまいますが、そのような表現をすれば子どもは傷つき、お絵かきがつまらなくなってしまいます。それに、一見Aくんの絵は写実性の強い絵でBくんの絵はそうは見えなかったとしても、Bくんにとっては、それが写実的な表現だったかもしれません。それぞれの絵が子どもの表出のなかから表現された作品であることを忘れないで、よく見て、その子が何を描きたかったか、描かれている心情をできるだけ理解することが大切です。  また、お子さんが自由に楽しんでお絵かきをするためにも、お母さんが直接色などを選んであげるのではなく、身の回りにあるいろいろな色や形に気付かせてあげてください。生活のなかで発見することから、お子さんは自主的に選択し表現するようになると思います。   周囲の人が、絵に表現したかったものや気持ちを理解して接してくれると、お子さんは次々に表現したくなるでしょう。そこで、すぐにお絵かきができるように画用紙やクレヨンなどを身近なところに置いて、描きたいという感情にこたえてあげてください。いずれにしても、人間の成長は時間のかかるものです。遊びを大切にしながら、じっくりとゆとりをもってお子さんの造形表現を見守ってあげましょう。


■遊びをとおしての経験が美的情緒をはぐくみ、お絵かきなどに表現するようになる。
■絵を、うまい・へたという視点で見てはいけない。
■何に感動し描こうと思ったのかを、絵をよく見て理解することが大事。
■お子さんが自主的に描けるように、普段の生活のなかでいろいろな色や形に
  気付かせよう。



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