第33回
牛乳は、カルシウムの供給源としてだけでなく不足するかもしれない栄養素を補ってくれる、優等生です。
荒井 威吉(あらい いきち)先生
新潟青陵大学短期大学部人間総合学科教授。農学博士。

牛乳は抜群のカルシウム吸収率で私たちの体をつくってくれる
 日本は世界一の長寿国ですが、日本人は命の寿命よりも健康寿命が7年間も短く、骨粗しょう症や寝たきりのお年寄りがとても多いのが現実です。粗食に耐えてきて丈夫だったはずのお年寄りでさえそうなのですから、現代の子どもたちの将来はどうなるか不安です。人間は18歳から20歳ぐらいまでに成長のピークを迎えるといわれていますが、体の組織もそのころまでにつくられます。子どものころにどういう食生活をして体をつくっていくか、栄養のバランスをとっていくかが、とても大切だと思います。
 牛乳には骨を丈夫にするカルシウムが豊富に含まれていることはよく知られています。牛乳と同じくらいのカルシウムを取れる食材はイワシやサンマで、しかも骨まで食べられる缶詰などでないと代わりにはなりません。さらにカルシウム吸収率が高いのも特徴で、日本女子大学家政学部の江澤郁子教授は牛乳40%、小魚33%、野菜19%という研究結果を発表しています。最近、「牛乳を飲むと太る」とか「骨粗しょう症になる」という内容の本がベストセラーになりましたが、女子栄養大学の上西一弘教授(栄養生理学)が中学・高校生男女約6000人を対象にいろいろな研究をなさっていて、牛乳を毎日200cc飲む人と400cc飲む人では体重や背丈に差はありませんでしたが、たくさん飲んでいた方が体脂肪率が低くなり筋肉が増え骨量も増えるという結果が出ました。牛乳有害説は正しくないことが証明されました。

必要な熱量を満たし、栄養バランスを考え、上手に組み合わせて食べよう
 しかし、体に良いからといって一つの食材だけをたくさん食べればよいかというと、そうではありません。  食事の基本は量と質。まず必要な熱量(カロリー)が満たされることが大切で、それもたんぱく質から13%、脂肪から25%、炭水化物から62%のバランスで構成されるのが理想とされます。また熱量を満たしていればよいというわけではなく、いろいろな食材を組み合わせて取るのは、それぞれが不足している栄養を補ったり吸収を助けたりするからです。たとえば、ビタミンDはカルシウムを吸収しやすくする働きがあります。また、牛乳には体のために重要な必須アミノ酸のリジンが多く含まれていますから、パンやご飯と一緒に取ることで、穀類に不足しているリジンを補い、食事バランスが安定します。「でも、ご飯の給食に牛乳は合わないのでは?」と思われるかもしれません。日本食で牛乳と同じ役割を果たしているのが卵です。卵は1日に1〜2個が適当ですから、朝食で食べていれば取りすぎになる可能性がありますし、給食では牛乳を取りいれることでバランスを保っているのです。
 このように、牛乳や乳製品は多く飲んだから太るわけでなく、良質なカルシウムで体をつくり、食生活で不足するかもしれない栄養素を補いバランスを整えてくれる食材です。私たちのとても身近にある牛乳を、もっと見直してほしいですね。


■牛乳は骨を丈夫にするカルシウムを豊富に含み、しかも吸収率が高い。
■必須アミノ酸のリジンを多く含み、ご飯やパンでの不足を補いバランスを整える。
■食生活で不足するかもしれない微量の栄養素を補うのに手軽で身近な食材。
■情報におどらされずに、いろいろな食材で栄養バランスのよい食事をしよう。



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