第30回
家庭の中で起こる、さまざまな問題やぶつかり合いは家族が本当の家族になるために、とても大切なこと
伊藤 真理子(いとう まりこ)先生
新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科講師。

ぶつかることは怖い…でもそれは人間関係を築く上で大切なこと
 最近学生たちを見ていると、人とコミュニケーションをとるときに、どうでもよいことは話せても心の中にある重要なことを話せない、自分を出すと他人に迷惑をかけるのではないかと思ってしまう、そんな様子が見うけられます。例えば集団で一枚の絵を描いてみましょうと言うと、まず自分のエリアに描き始め、そのうちに真ん中に空間ができますが、そこには誰も手を出さないので絵がなかなか完成しないのです。どうもほかの領域に入っていけないようで、人に優しいのですが本当の人間関係ができにくくなっているのではないでしょうか。
 そしてこれは、家族にも言えることです。親は子どもに気をつかい、自分と違う考えや行動があったとしても言わないし、指摘したとしても「うるさい」とか「放っておいて」と言われると、とことん話すのを避けてしまう。子どものほうも言わずに我慢していることが多いようです。親子で食い違いが生まれたときに「お母さんはこんな気持ちなのよ!」と話したりけんかをしてもいいのではないか、そういうこころのぶつかり合いが、家族には必要なのではないでしょうか。
 また家で不登校などの問題が起きたときに、すごくだめなことだと思ってしまったり、お母さんが自分自身の子育てを否定してしまうことがありますが、いろいろな問題が起ったとき、つらい気持ちや否定的な気持ちを抱えながら、それを乗り越えてこそ、家族が本当の意味での家族になっていくのではないでしょうか。バラバラだった家族が、一つ問題が生じることで家の中の人間関係を振り返るようになるということもあります。問題が起こったことは一つのチャンス。その苦しみに家族それぞれが共に取り組むことからまた新しい家族のありかたが生まれてくるとも捉えられるのです。

子ども同士のぶつかり合いを見守ることも、子育てには必要
 子どもと遊んでいて気になるのは、日常生活で、大人がいかに手を出し過ぎているかということです。遊びですから奇想天外なことをするものですが、子どもが発想や創造力を発揮する前に、大人が「これはこうしたらいいよね」と、つい補助してしまう。同じようにお友だちとの関わり方についても、お母さんがトラブルが起こらないようにと先回りし過ぎることはないでしょうか? お子さんたちが遊んでいるときに、ちょっとお友だちのものを取ったりするのを見ると「いけないよ、返そうね」「ごめんね」と言って、すぐにやめさせようとする。もちろん怪我には気をつけなければいけませんが、子どもは子ども同士の社会の中で、泣いたり怒ったりしながら経験をすることで学ぶこともあるのです。子どもが自由な発想で遊べる環境をつくりながら、「この範囲なら自由にやってみて」という大きな器での見守り方が大切だと思います。
 ただ、お子さんに対する接し方は家庭によってさまざまです。だからこそ親同士もコミュニケーションが大切で、遠慮をして言わないのではなく、自分の子どもに対する考え方やお子さんとの関わり方について、どんどん話して深い関係を築いてほしいと思います。


■本当の人間関係を築くには「ぶつかること」も時には大切。
■親子で遠慮はしないで。食い違いを恐れずに気持ちを伝えよう。
■子どもの自由な発想や創造を見守ろう。
■子どもは子ども同士でぶつかりながら、学んでいくこともある。



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