第23回
音楽は子どもたちの心を育ててくれる大切なもの お話を交えながら、分かりやすい歌を一緒に歌いましょう。
柳 紘(やなぎ ひろし)先生
新潟青陵大学短期大学部幼児教育学科教授

歌が教えてくれる大切なことをお母さんお父さんが話して聞かせて
 エジプトでは紀元前2500年ぐらいから「音楽は心の病の薬」と言われていましたし、音楽を持たない民族はいないと言われています。音楽は悲しみに対する慰めだったり励ましだったり、苦しみをやわらげてくれたり、時には勇気付けてくれるものです。では、子どもたちにとっての音楽はどうでしょう?
 子どもにとって幼稚園や保育園で歌う歌と、大人がカラオケなどで歌う歌とは違うと思います。小さな子どもが真似をして大人の歌を歌うことがありますが、意味が分かって初めて、音楽が子どもの心を育ててくれるのではないでしょうか。たとえば「めだかの学校」という曲がありますが、この歌は区切りとして8小節で終わるのが普通なところ、2小節多くなっていて、〈そっとのぞいて見てごらん〉という歌詞を繰り返します。「そっとのぞくのだよ。逃げちゃうから、そっとだよ」と、小さな動物に対するやさしい気持ちとか、大きな声を出さないようにしようねといった大事なことを教えてくれているのです。このように子どもの歌は、いろいろなことを教えてくれます。お父さんお母さんがお子さんとお話しを交えながら一緒に歌い、気持ちを伝えることが、本当の心情・情操を育てることになるのではないでしょうか。

お子さんの心を育てるために音楽をたくさん使ってほしい
 宗教心、道徳心、善悪を判断する心とか人を思いやる心など、ありとあらゆることが情操だとすれば、優しさとか、きれいなものに対する気持ちや表現のしかたを体感できるのが音楽です。そして歌は、お風呂のときの鼻歌など、いい気持ちのときでないと出てこないもので、このいい気持ちというのが、とても大事だと思います。最近、犯罪が低年齢化していると言われていますが、その理由の一つとして、いい気持ちになることが少なくなっているからではないでしょうか。家族でハミングしながら歩くとか、お母さんが料理をしながら歌っているとか、そんな光景が想像できなくなっています。子どもの歌も商業ベースに乗ったものがあふれ、昔からあった良い歌も、言葉の意味がすぐに通じないからという理由で歌われなくなってきています。子どもは歌によって遊びや季節感などを覚えていくこともあるのに、言葉を教える努力はしないで歌うのを辞めていくことは、見直さなくてはいけません。昔の歌でも良いものは掘り起こして家族で歌ってほしいですね。音楽だけでなく、伝統や文化など良いものを途切れないようにつないでいくことも、私たちの役割ではないでしょうか。
 音楽は直接受験に関係するわけではないし、やらなかったからといって死んでしまうわけでもありません。しかし人間はほかの動物と違い、人とコミュニケーションをとりながら生きていかなくてはなりません。だからこそ子どもたちの心を育てることが大切で、そのための手段として、音楽をたくさん使ってほしいのです。


■子どもの歌は、子どもにとって大切ないろいろなことを教えてくれる。
■子どもが理解できる歌詞の歌を、お話を交えながら歌おう。
■心を育てるために、音楽をたくさん使おう。
■良いものは掘り起こし、後世につないでいくことも大事。



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