第18回

沼野みえ子(ぬまのみえこ)先生
新潟青陵大学短期大学部人間総合学科講師。
介護と子育ては似て非なるもの。どちらも、介護する側や子育てする側の都合で進めようとするとお互いの気持ちがすれ違い、うまくいかないようです。 今回は介護や子育てをするときの基本的な考え方について、新潟青陵大学短期大学部講師の沼野先生にお話しをお聞きしました。

子どもの抵抗もお年寄りの徘徊(はいかい)も気持ちの表れとして受け止めて
 認知症の方と接するとき、「きっと何もわからないだろうから」と介護する側のペースでどんどん事を進めてしまうと、症状がひどくなることがあるようです。人は自分の役割がなくなったり必要な存在と思われなくなると、生きる力が落ちてしまう。そうなったときに、認知症がひどくなったり、漠然とした不安な気持ちを徘徊などという形で表現したりするのです。
 これは子育てにも言えることです。私の経験ですが、保育園で遊んでいる赤ちゃんのオムツをいきなり換えようとしたら、すごく抵抗をされたことがありました。子どもにもやりたいことがあるのに、それを無視してこちらの都合でオムツ換えなどをされたら、どんなに赤ちゃんであっても気分が悪いはずです。それに気づき、声をかけても聞こえないふりをするようなら、それは意思表示と理解して待つようにしました。しばらくして「オムツ換えたいな」と言うと、今度は手を伸ばして抱っこを求める仕草をしてくれました。
 小さい子どもが漠然とした不安感を右脳で感じて泣いて訴えるのと、認知症の方が徘徊という形で訴えるのとは、すごく似ていると思います。左脳が発達してしまった私たちは、かつては持っていた感覚なのに、なかなかそのことがわからなくて理屈で子どもを育ててしまう。こうあってほしいという形から外れていると問題行動ととらえてしまいますが、行動を起こしている側からすれば、ちゃんと理由があるのです。

“やりすぎない”子育てと介護で役に立ちたいという気持ちを大切に
 最近の介護はお年寄りの負担をなるべく少なくして満足のいくサービスを、と考えられられているようですが、お年寄りが何もできないかというとそうではありません。学生が施設に実習に行くと、逆に元気をもらって帰ってきます。ある利用者さんが紙に書いた言葉がほかの利用者さんの励みになっていたり、実習生がオムツの換え方を認知症の方本人に教わって感謝すると、「私でも人の役にたてるんだね」と言われたと話していました。学生は教えてもらえて助かったし、教えたほうも役割ができたという喜びがあって、お互いにハッピーになれる。介護とは、そういうものではないでしょうか。
 子育ても、親があれやこれやと手をかけすぎないようにすることが大切です。すごく関心をはらっているけれども手出し口出しは最小限に、というさじ加減が大事なのです。子どもといえども親のことをとても気遣っていますし、誰かが困っていると助けてくれようとしてくれます。何もわからなくて一方的に世話をされる存在ではなく、誰かの役に立とうと思っているのです。そんな本人の気持ちをしっかりと受け止めていけば、介護も子育ても楽になり、お互いに気持ちの良い関係が築いていける。「持ちつ持たれつ」という気持ちを大切に…これは介護や子育てに限らず、人と人との関係すべてに言えることではないでしょうか。


■行動の一つ一つが気持ちの表れと受け止める。
■介護も子育ても「やってあげる」のではなく「持ちつ持たれつ」
 という意識が大切。
■やりすぎず、基本的には本人の意思を尊重する。
■誰にでもある「役に立ちたい」という気持ちを大切に。



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