自然豊かな丘にたたずむワイナリー。ほどよく整備されたガーデンファームをゆったりと散策すれば、季節ごとのさわやかな香りが風に運ばれ、心地よく鼻をくすぐる。初秋の青空と深い緑に映える、極上の空間だ
玉村豊男(たまむらとよお)
1945年、東京生まれ。エッセイスト、画家、農園主。1991年、長野県東部町(現・東御市)に農園を作り、広大な畑で多種類のトウガラシやトマトといった季節の野菜、ハーブ、ぶどうなどの栽培に取り組みながら、執筆・創作活動を続ける。「パリ旅の雑学ノート」「田園の快楽」など著書多数。2004年春、自園自醸のワイナリーやカフェ、ショップを併設した「ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー」をオープン。

●ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー
長野県東御市和6027
TEL.0268(63)7373(代)
営業/4月〜11月の10時〜日没
ワイナリーのオープンで集う人たちと、より身近に
 都会を離れて営む田園生活の先駆者である。21年前、軽井沢ではじめた田舎暮らし、そして現在の場所に移っての農園生活は、今注目を集める「スローライフ」へとつながる源流だ。
 「最初は成り行きだったんだけどね。生活自体は都会とさほど変わらないんです。不便を感じたこともない。そもそも田舎暮らしをしているという感覚が本人にはないんですよ。ただ自分のペースで暮らしているだけ」
 とはいえ、「空気がおいしくて四季の移り変わりが美しい」というこの土地に魅せられた玉村さんは、ここでさまざまな夢を形にしてきた。紆余(うよ)曲折を経て今年オープンしたワイナリーも、そのひとつである。
 「ぶどうの栽培は12年くらい前から手がけていたんだけど、3年前くらいに思いたってスタートしたんです。カフェも同時にオープンすることによって、お客さんがより身近になりましたね」と笑顔を見せる玉村さん。
 「採れたてのおいしい野菜とワインをじっくりと味わってほしい」
 そんなストレートな思いを実現した空間に、「今後は集まる人たちがどんなふうに使ってくれるかに興味がある。いろんなアイデアが生かせるような、そしてたとえば僕がいなくなっても、ちゃんと続いていくような場所に育ってくれたら」と、新たな夢を託す。


心豊かな田園暮らしそして生まれた作品たち
 「朝は毎日5時に起きて、犬の散歩を済ませたあと、昼食の時間まで原稿を書いたり、絵を描いたりして過ごします」。そして日課の昼寝をして、畑に出たり人と会ったりしながら午後を過ごしたあと、ゆっくりと時間をかけて夕食を作り、食べる。それが玉村さんの日常だ。「友人が多く、ゆかりのある場所」という新潟で行われる今回の展覧会にも、「ワイナリーの壁画になるものをお披露目したい」という注目の作品をはじめ、そんなゆとりある生活の中から生まれた絵画や版画が多数展示される予定。さらに氏と直接ふれあえるサイン会や、来春発表するワインの予約先行販売など、充実の内容に期待は募る。
 「今年はぶどうに最適な気候だったから、きっとおいしいワインに仕上がりますよ」
 実りはじめたぶどうの青を手にとりながら、日に焼けた顔で玉村さんはほほえんだ。
 この展覧会で氏の作品を鑑賞したら、秋の1日、のんびり「ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー」へと足を延ばしてみよう。展覧会で見た版画が、そのワイナリーの壁を彩る日もそう遠くないはずだ。

12年前、わずか500本の苗からはじまったぶどう畑も、今では約9,000坪を誇る広大なものに。その畑をゆったりとめでるように歩く玉村さんの姿が印象的だ。メルローとシャルドネで丁寧に造ったワインはカフェにて(グラス600円)
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