毎日の暮らしの中で、”物”は使うほどに古くなるが、長く使い続けたものは歴史、ぬくもり、趣がある。ただやみくもに新しいものを求めるのではなく、ひとつのものにとことんこだわり、考えてみる。生活のうえでの心地よさ、充足感はそういうところからも生まれるのかもしれない。
よみがえる木工への愛着
側面の板が腐ってボロボロになった茶だんす。色のはげたちゃぶ台。他人が見たら「捨てた方がいいのでは?」と思えるものでも、持ち主にとっては思い出のつまった大切なもの。 「実際のところ修理に出せば、買った方が安い、と新しいものをすすめられるでしょう。ですが、古いものには古いものなりのよさがあります」と話す「愛着工房いしかわ」(新潟市北山)の石川彰さん(42)。石川さんは、5年ほど前から、古くなった木製品や骨とう、アンティーク家具などの補修や塗装、化粧直しを行っている。 表面の様子をみながら丁寧にやすりをかけ、汚れを落としたあと塗装を施す。金具等部品がないものは交換したりもする。いかにも新品にするのではなく、もとの質感を損なわないように、なおかつ木の持ち味を生かすように仕上げるのが難しくもあり、その分やりがいもあるとか。 「キズやシミを元通りにしてもらいたいという方、親やその上の代から使ってきたものなので残しておきたいという方のほか、古道具店から買ったものを修理に出される若い方もいらっしゃいます」。 遠く、静岡や鹿児島から依頼を受けることもあるとか。料金は、座卓の傷の補修で状態のいいものなら1万円から。予算に合わせた補修も行っている。
粗くやすりをかけ、表面の漆を落とした後、色を塗る
「愛着工房いしかわ」
新潟市北山1336−4
TEL025(382)4686 日・祭日休
http://www.page.sannet.ne.jp/cafe-sunaba/kouboutop.htm
新しく塗りなおした、たんすの部分(左上)
帯を使ったバッグ13,000円
古布を今に生かす
蚊帳素材のワンピースに浴衣地で作ったジャケット、帯を利用したバッグ。これらはすべて昭和初期以前の明治・大正時代に作られた生地、「古布」を使ってリメークしたもの。
「古布が好きでずっと集め続けていたんです。もともとは洋裁を長くやっていたのですが、10年ほど前から1点、2点と作っていくうちに、気に入ってくださる方がどんどん増えてしまって」と話す籠嶋カツミさん。リメーク品を自宅で展示、販売している。
絣(かすり)や紬(つむぎ)など古くなった着物は糸も弱くなっており、丁寧に扱わないと生地が傷んでしまうので気を使う。「でも、この着物はどんな時代に、どんな人が、どんな思いで着ていたんだろうと考えながら糸をほどいていくのは作品を作っているときよりも楽しいんですよ。どんなものを作ろうか、イメージもどんどんわいてくるんです」
今の生地にはない古布ならではの風合い。身につけるとしっくりとなじむ感覚。出来上がった洋服や小物は、懐かしいのにどこか新しい、そんな雰囲気を漂わせる。「素材は木綿や麻ですからお手入れも楽なんですよ。本当に気に入ってくださった方に着ていただければこんな幸せなことはないですね」
大漁旗のコート20,000円
籠嶋さん宅
新潟市鳥原2894−2
TEL 025(379)3513
月、水を除く10:00〜17:00。事前に電話で連絡を
一目一目糸をほどいてゆく籠嶋さん
着物を使ったワンピース
18,000円