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豊かな自然、独特の文化がはぐくまれてきた佐渡―。 パワフルに、着実に島の暮らしに根をおろし、 縦糸、横糸として島の魅力を織りなす4人の方たちを訪ねた。 取材・文 撮影/磯野保 |
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平沢藍さん(24) =羽茂町= 1978年、東京都荒川区生まれ。ファッションイラストレーターを目指し、「セツ・モードセミナー」に入学。 休学して2000年に佐渡へ。文弥人形の「猿八座」に入門。 |
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「佐渡にいると『昔の日本』がある。夢を持っていてもファッションは使い捨て。アーティストを目指すためにも、佐渡の荒波=自然の厳しさの中に身を置いて心の骨、血、肉を蓄えたかった」という平沢さんは、佐渡の南部、羽茂町に住んでいる。もともと母親が佐渡出身、祖母も同じ町にいることも心強かった。「自分のバックボーン・佐渡を日々感じる毎日です」
元廃屋だった住まいには、いろり、化粧細工の施された欄間など懐かしい生活の道具が身近にある。「冬はかなり寒いけど、慣れていこうとする自分が見えるんですね。遊びに来た都会の友人が五右衛門風呂に入って、驚くのが楽しいんです」佐渡に来てほどなく、島に伝わる伝統芸能、古浄瑠璃の文弥人形・猿八座に入門。アンティークショップの手伝いなどで生計を立てながら、遣い手として修練を積んできた。一座は24歳から55歳まで。舞台が近づくと集中的なけいこに入る。現在、文楽座出身の人形作家、西橋健さん(畑野町)、カナダ人のジョン・ウエルズさん(羽茂町)と3人で遣い手として座を担う。人形と一つになれた瞬間がなにより。ここ2年は英仏公演もこなした。 十八番の「信田妻」は、陰陽師(おんみょうじ)・阿部清明(あべのせいめい)の出生の秘密を描いた作品。母がキツネである残酷な運命を知らされる清明の悲哀と運命の物語だ。清明幼少の「童子」役を演じるたび「物語の魅力にはまっていきます」とほれ込んでいる。 9月には若いときにしかできない長旅、ヨーロッパ14カ国を旅する。「貧乏旅行の達人がいたらコツを教えてください」と笑った。 |
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![]() 小林辰美さん(49) =畑野町= 新潟市生まれ。小学校から高校まで村上、高田(現上越市)、 新津で過ごす。都内の大学卒業後、在学中から働いていた出版社に勤務。 92年に新穂村、94年に畑野町へ移住。妻と子どもの6人家族。 |
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家の向かいに山が迫る。アカショウビン、オオルリのさえずりと広葉樹の緑が優しく出迎えてくれる。全国の書店への営業などで忙しかった出版社時代、充実していた日々だったが東京の乾燥した空気や人込みで心の皮膚が「カサカサ」してくるのを感じていた。学生時代にキャンプで訪れた島は「海で隔てられ、昔が残っている場所」という候補地としてぴったりだった。 仕事を辞め、新穂村での家族6人暮らし。妻・亮子さんが始めた「ポッポのパン屋」を見よう見まねで手伝ううちにパン作りを覚えていった。各町村の定期市や、イベントへの出店で売り出したパンは、瓶の中でレーズンを発酵させて作った天然酵母を使っている。素朴でしっかりとしたその味わいが口コミで広まり、じわじわと固定客がついた。店舗は持たず、佐和田などの定期市での販売のほか、水曜と日曜に亮子さんが焼きたてを島内に配達している。今では、新潟市などの島外ファンにも発送している。 夜は金井、真野で学習塾講師として小学生から高校生に国語や数学を教える。ときにIターンの相談が寄せられることもあるが、「一から生活基盤を作るのはきついから、安易には勧められません」という言葉に地道な暮らしの苦労もにじませる。自宅近くには畑15アールを借り、家族で食べる分の大豆、小豆、野菜など50種類の作物を育て、“半自給自足生活”。パンの原料にとライ麦も育てており「今後は自家製野菜を使った『ニンジンパン』など旬の野菜や果物を取り入れたパン作りを目指したいですね」と夢を膨らませる。 |
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![]() 仲川純子さん(46) =新穂村= 山形県鶴岡市出身。出羽三山のふもとで育つ。 夫の転勤で、1986年から夫のふるさと佐渡へ。新穂村「トキの森公園」職員。 |
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子どものころからの動物好き。高校生のころはニホンザルに興味を持ち、動物行動学の本も読んでいた。夫の転勤先でふるさとでもある新穂村で「トキの森公園」の職員募集があったときは自然に応募していた。「でも、トキについての知識はまったくなかったんです」
トキの森公園はかつてトキが大空に見られたころの自然を題材に、さまざまな樹木が植えられている。4ヘクタールの敷地には、中国の支援でふ化したトキなどがいる佐渡トキ保護センターや、トキ資料展示館があり、卵の見本やはく製などを見ることができる。 普段は、展示館を訪れた修学旅行の小学生らにトキの生態を話している。150センチの小柄な体、全身を使ったアクション交じりの話は分かりやすいと人気。「トキの羽はいわゆるトキ色といわれる淡いピンク。繁殖期には、皮膚からでる黒い粉をこすりつけ、生殖羽といわれる黒ずんだ色になるんです」と生態を語るその口調は熱い。 環境の悪化で、餌となるドジョウやタニシなどの激減もトキ減少の一因。人工繁殖が成功して以来、佐渡を「日本の環境モデル地域」にしようという動きが盛んになってきた。仲川さんも昨年発足した「トキどき応援団事務局」を預かるように。週末は、かつて、トキ保護センターがあった清水平で泥まみれになりながら、野生復帰を想定したトキの餌場(ビオトープ)作りや、田の手伝いなど環境回復のボランティアに汗を流す。天敵、カラスの繁殖期にはその生息調査にも走る。餌になる生物調査など課題は山ほど。「簡単ではないけれど、息長く続けていかなければなりません。気負わず、長く続けるための“ときどき”応援団と理解してください」。田仕事などには毎回20人前後が集まる。遠く茨城県からの参加もあり、その輪は広がっている。 |
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![]() 石塚充さん(24) =小木町= 埼玉県出身。東京・池袋育ち。 高校は、教育方針として拘束しない、テストのない「自由の森学園」へ。 99年に鼓童文化財団研修所入り。 2001年に初舞台。 |
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父親は、長唄や歌舞伎の地方(じかた)として活躍する邦楽家。その影響で、小さいころから太鼓や小鼓のそばにいた。中学3年生の夏、アースセレブレーションに接して感動とショックを受けた。「私は、基本的に引っ込み思案で、自分のアピールが下手くそだったんです。そんな性格の中に音が入ってきて、目の前が明るく感じたんです。やってみるしかないな」と思いました。 99年春、両津市にある鼓童文化財団研修所に入った。同期は男女半々の合わせて8人。2年間の規則正しい共同生活で、自分や他人と向き合った。「他人と正面から向き合うのは初めてでした。よい面、つらい面がありました」。初舞台は能生町の中学校だった。緊張感に震えながらも研修所生活から「抜け出た」という開放感に満たされていく自分がいた。 一つ一つ舞台を踏んで、着実にプレーヤーとしての力を蓄えていった。今は、大太鼓のたたき手として、全国公演や海外を回る日々。佐渡にいるときは、「時間がゆっくりと流れている感じかな。太鼓の音の中で一日過ごしていて、夜がくると、音のない静寂の世界に入るんです。この生活は今の自分に合っている」。町で買い物をして、おばちゃんと仲良しになる。地域の中でも、受け入れてもらっている。今、一番大切なことはそんな地域の人々との触れ合いだと感じている。これは集団としての「鼓童」の目指すところでもあると思う。ヨーロッパなど海外公演も大切だが、佐渡の公演が一番と考えている。「日ごろのおじちゃん、おばちゃんの付き合いを大切にしたい。佐渡で常設コンサート会場があれば」と語る。 |
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佐渡の自然と響きが一つになる「アース・セレブレーション」。今年は西アフリカからゲストを迎え、8月22日(金)から24日(日)まで開催。小木町城山公園を会場に午後7時から。22日は鼓童、23日の「アフリカン・ナイト」はクリバリー・ファミリー、24日、「祝祭」は鼓童とクリバリー・ファミリーが出演。前売り(22、23日)大人4,700円、24日は5,200円。3日間通し券は13,000円。中学生以下無料。このほかワークショップも。問い合わせは、鼓童0259(81)4100。 |
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