田中晋作
日本文学専攻の大学生21歳。
新潟市から進学とともに上京。
パンクロックの洗礼を受けてからは音楽ざんまいの日々。


Hi―Standard
「ANGRY FIST」
(TOY‘S FACTORY 2427円+税)
eastern youth
「旅路ニ季節が燃エ落チル」
(TOY‘S FACTORY 税込み2730円)

心に浮かぶあの帰り道

 僕は高校2年のころ、兵庫から新潟に戻ってきました。今まで築き上げてきた人間関係が白紙になり、しばらく落ち込んでいましたが、これを機に、消極的な性格だった自分を変えていこうと決意しました。しかし、新しく入った高校には、無気力、無関心な雰囲気があふれているように見えました。みんな何かを胸に秘めているはずなのに、そのことから目をそむけているように思えたのです。それを見て、ぼくは自分が感じ、思ったことに対して正直でいようと思いました。
 みんな心のどこかに隠した声を持っている。それは小さな声で、日々をせわしなく生きているとつい聞き落としてしまうものです。でも、よく耳を傾けてみれば自分が信じているその声の純粋さに気づくはず−。昨今のパンク・ロックブームの立役者でもある「Hi−Standard(ハイ・スタンダード)」は「ザ・サウンド・オブ・シークレット・マインズ」という曲でそう歌います。彼らの歌から「自分自身を見つめて心を開くんだ」という大切なことを教えられました。
 その後、お互いのことを認め合える友人に出会えましたが、一方で周囲からの疎外感も強まり、学校にいることが憂うつな日々が続きました。そんな日々に耐えられず、「自分の生き方は間違っているのかなあ?」などと信濃川のほとりを自転車で走りながら考えていました。そのころよく聴いていたのが、「eastern youth(イースタン ユース)」(結成10年以上の3人組ロックバンド。日本語を大切にした歌詞が特徴)の「夏の日の午後」という曲です。目には見えない大きな不安を感じながらも、それを打ち消すかのように叫び、全身全霊で歌うボーカルの吉野寿。彼の姿に圧倒され、心を打たれました。人間が孤独なのは当たり前。それなら、そのことから逃げずに孤独を誇りに思えばよいのです。慰めでもメッセージでもない彼らの歌から、当時の僕はそんなことを感じていました。今、僕は、東京に住んでいますが、思い立ったようにこの曲を聴くと、あの帰り道の風景が目の前に現れ、僕の現在位置を確認させてくれるのです。

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