3―4年ほど前に知人から教えてもらったのがきっかけで、聴き続けているのが、「タンゴの革命家」と呼ばれるバンドネオン奏者、故アストル・ピアソラです。バンドネオンは、形はアコーディオンに似ているのですが音はオルガンに近く、ノスタルジックで人間味ある温かな響きを持つ楽器です。その音色と美しい旋律に、初めて聴いたときは「こんな音楽があったのか!」と強い衝撃を受け、時間を忘れるくらいに聞き入ってしまったほどです。彼の音楽からは絶望の中にも希望の光を見いだす大きな力のようなものを感じますね。
この「ラ・カモーラ」はキップ・ハンラハン率いるアメリカンクラーヴェ3部作の最終章であり、5重奏団として最後のオリジナル・アルバムです。なかでもアルバムタイトルでもある「ラ・カモーラ氈`。」は特にすばらしく、壮大なスケール感もさることながらピアソラ自身や楽団のメンバーの情熱がより強く感じられて圧倒させられます。
タンゴをベースにしつつも、クラシック、ジャズ、ロックなどさまざまなジャンルの要素を取り入れてまったく新しい音楽をつくり出したピアソラは、それまでの踊るための音楽であったタンゴを「聴くためのタンゴ」という新しいジャンルに進化させました。今でこそヨーヨー・マや小松亮太らがカバーしたり、CMやドラマに使われたりと幅広く浸透していますが、発表当時はその特異性ゆえ周囲からも理解されず反発や非難を浴びたそうです。芸術の分野でもそうですが、新しいものを生み出すためには逆境に耐えうる揺るぎない信念とひたむきな情熱が必要なのではないでしょうか。そのようなピアソラの生き方に私もまた共感せざるをえません。若い人にもどんどん知ってもらいたいですね。
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