忘れられない心に残る1枚は、横山静子トリオの「MY MOTHER」です。横山さんは、デューク・エリントン楽団で長く活躍していたこともあるジャズ・ピアニスト。ドラムはご主人でもある田井中福司さん、ベース・金澤英明さんの3人で出したアルバムです。2002年の2月に発売されたのですが、彼女にとって初めて出したこのCDが遺作となってしまいました。その年の8月、乳がんのため亡くなったのです。
横山さんと知り合ったのは、8年くらい前。彼女はニューヨークにもう20年ほど住んでいて、時々日本に帰ってきては、友人を訪ねてライブを開き、またニューヨークに帰るという生活をしていました。知り合いを通じてうちの店にピアノが入ったことを伝えると、「もっと多くの人に聴いてもらいたいから」とライブを開いてくれることになったのです。
小柄な彼女はいつも指を目いっぱい開いて、それは力強い演奏をする人でした。毎年秋のライブの後には、ノドグロを焼き、炊きたての新米と一緒に出すと「これが一番おいしいね」と喜んで食べていましたね。
洋楽からボサノバ、それからジャズを聴くようになりましたが、ジャズは演奏者の感性によっても全く違う音楽になってしまいます。それが魅力でもあり、楽しいところでもあります。「音楽は楽しくてウキウキするものでなければならない」。横山さんのピアノからは、そんな思いを教えられた気がします。
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