堀川久子
舞踏家。2003年、新潟大学人間科学科制作の「うちのDEアート」や新潟市下(しも)町の路上で展開する「路地」シリーズなどのほか、オランダ国立オペラ「魔笛」に出演するなど欧米での活躍も多い。1955年、新潟市生まれ。


「アントニアの食卓」
(95年、オランダ・ベルギー合作)
監督・脚本:マルレーン・ゴリス
出演:ヴィルケ・ファン・アメローイほか

ある小さな村に、アントニアが娘を連れて戻ってくる。古い道徳観に凝り固まった村人たちは、新しい価値観を持った彼女と打ち解けられずにいた。しかし、太陽のような温かさと、大地のような包容力で村人に接する彼女に次第に心を開くようになる。1996年アカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞。オランダ映画祭最優秀監督賞・最優秀女優賞受賞。


淡々と描かれる日々が静かに心に迫る

 オペラに出演するため、10年前にオランダへ行ってからというもの、ワークショップなどで毎年、現地を訪れるようになりました。オランダ人は節約で有名ですが、女性は強くて合理的。人間は陽気でデモクラティックという感じが、いい意味で出ている映画です。3、4年前にテレビ放映を偶然、録画していて見たのですが、アントニアをはじめとする登場人物が、向こうで出会った女性たちと重なってとても親近感を覚えました。
 「夫はいらないけど子どもがほしい」というその娘、孫からひ孫へと物語は4世代にわたる女性が自分の意思と信念を持って、生きるさまを淡々と描いています。命の誕生や老い、死など、良いこと、悪いことなにが起こっても刻々と時は刻まれていくというメッセージにも似た静かなもの、人物を見つめる視線の気負いのなさが印象に残りました。
 高校時代に新潟で即興音楽のライブを見て感激し、その後、東京で暮らすうち、舞踊の世界へ身を置くようになりました。舞踏家の田中泯さんと出会い、体全体で表現する踊りの素晴らしさに触れ、ともに山梨県へ移り農業をしながらけいこを続けました。1998年に新潟に戻りましたが、都市の中の自然に疑問を感じ、路上でのパフォーマンスをするようになりました。人生や日々の暮らしは、アントニアのひ孫・サラの言うように「生きたいという『命のダンス』があるだけ」なのかもしれませんが、私もそんなふうに「命のダンス」を踊っていけたらと思います。

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