劇団に入ったのは、ずっと戯曲を書きたかったから。脚本書きはもちろん、役者や演出もこなしていたある日、仲間に「今度、家族ゲームのような作品をやりたい」と言われ、早速ビデオを借りて見たのがこの作品でした。
最初に見たとき、「演出」であの松田優作がここまで変わるのかと、正直とても驚きました。「太陽にほえろ」の刑事役の激しいイメージから一転し、抑えた演技でたんたんとひょうひょうと「吉本」という男を演じていたのです。忘れられない場面は吉本が団地のあるアパートに船に乗ってやってくるシーン。意味もなく面白く、思わず笑ってしまいました。また、演出で最も衝撃を受けたのは、家族の食事の場面です。なぜか、家族が横一列に並んで食事をするのです。あの配列で家族の構図やそれぞれの気持ちが決して交わらない方向に向かっていると、一瞬にして観客に伝えることができる。常識にとらわれない発想を心がける大きなきっかけになった1本でした。
私が主宰する劇団第二黎明期は今年20周年を迎えます。年2回ほどの定期公演を新潟市内などで行ってきました。家族ゲームの中で、松田優作が家庭教師をしている少年に突っ込まれたとき、すっとハンカチで汗を押さえるシーンがあって、自分の劇でもぜひあれをやってみたいと試みたのですが、あんなふうにかっこよくは決まらず、難しいなぁと思いました。演出で大切なことは、舞台に立つ役者の魅力を最大限に引き出してあげることだと思っています。役者自身も気付いていないその人が最高に輝く一瞬を見つけ出す仕事、そのことを目標にこれからも演出の持つ可能性に挑戦し続けていきたいですね。
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