「ノー・マンズ・ランド」は雑誌の紹介で知ったユーゴ紛争の映画です。多くの戦争映画の中でも一風変わった異色の作品でした。戦闘シーンがほとんどなく、同じ場所での1日を追ったストーリーで、人間の心の移ろいが、おかしく皮肉たっぷりに描かれています。1回見ただけでは理解できないシーンや、言葉、民族、宗教の問題なども出てきて、関心を持ちましたね。私にしては珍しく、解説本を手にして映画を見直しました。ボスニア兵チキがローリングストーンズのTシャツを着ているのは、ボスニア兵が軍隊を持たず、市民が着の身着のまま駆り出されたこと、アメリカ文化の影響が強いということ、Tシャツの絵柄が「あっかんべー」と舌を出しているのは戦争に対しての意思表示であることなど、Tシャツ1枚にしても、それが事実であり意味があることを知りました。監督自身がボスニア兵として前線を体験したからこそ「for peace」というメッセージが痛烈であり、実際の紛争映像を挿入したことで「これが真実」であることを、決定づけています。仲裁に入った国連防衛軍の無力さ、保身に走る国連上層部、スクープに執着するメディアなど、現代の戦争を取り巻く状況を映し出し、さまざまな問題も投げかけています。
普段ニュースでいろいろなことを見聞きしていますが、実は何も分かっていないと思いました。事実、民族紛争など日常生活からかけ離れたことですから。そういった現実を、見るほどに知り考えさせられる、静かに私を突き刺した映画です。
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