勝見江津子
映画サークル「昼下がりの映画サロン」代表。新潟市在住。(「昼下がりの映画サロン」は毎月第2日曜日、中央公民館にて活動中。20年目を迎え、現在メンバーは20人)


「ノー・マンズ・ランド」
(2001年、仏、伊、英、ベルギー、スロベニア共同制作)
監督:ダニス・ダノヴィッチ
出演:ブランコ・ジュリッチ、レネ・ビトラヤツほか
〔発売元:東芝デジタルフロンティア(株)、販売元:ポニーキャニオン、税込み4935円〕

ボスニアとセルビアの中間地帯(ノー・マンズ・ランド)の塹壕(ざんごう)に取り残されたボスニア兵チキとセルビア兵ニノ、そして少しでも動けば爆発してしまう地雷を仕掛けられたボスニア兵ツェラの1日を無力な国連やスクープ争いをするマスコミを交え、ユーモアたっぷりに描いている。2002年アカデミー賞外国語賞受賞。


見るほどに考えさせられた知らない現実

 「ノー・マンズ・ランド」は雑誌の紹介で知ったユーゴ紛争の映画です。多くの戦争映画の中でも一風変わった異色の作品でした。戦闘シーンがほとんどなく、同じ場所での1日を追ったストーリーで、人間の心の移ろいが、おかしく皮肉たっぷりに描かれています。1回見ただけでは理解できないシーンや、言葉、民族、宗教の問題なども出てきて、関心を持ちましたね。私にしては珍しく、解説本を手にして映画を見直しました。ボスニア兵チキがローリングストーンズのTシャツを着ているのは、ボスニア兵が軍隊を持たず、市民が着の身着のまま駆り出されたこと、アメリカ文化の影響が強いということ、Tシャツの絵柄が「あっかんべー」と舌を出しているのは戦争に対しての意思表示であることなど、Tシャツ1枚にしても、それが事実であり意味があることを知りました。監督自身がボスニア兵として前線を体験したからこそ「for peace」というメッセージが痛烈であり、実際の紛争映像を挿入したことで「これが真実」であることを、決定づけています。仲裁に入った国連防衛軍の無力さ、保身に走る国連上層部、スクープに執着するメディアなど、現代の戦争を取り巻く状況を映し出し、さまざまな問題も投げかけています。
 普段ニュースでいろいろなことを見聞きしていますが、実は何も分かっていないと思いました。事実、民族紛争など日常生活からかけ離れたことですから。そういった現実を、見るほどに知り考えさせられる、静かに私を突き刺した映画です。

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