島村麻里 Shimamura Mari
1956年東京生まれ。大学卒業後、メーカー、放送局勤務を経てフリーライターに。読書と旅行、食べることをこよなく愛している。新潟日報などの新聞や雑誌に書評やコラムを執筆。著書は「アジアン・リゾートに快楽中毒」(講談社)、「本日のへなへなくん」(角川文庫)、「地球の笑い方」(講談社文庫)など多数。

イギリス人がお茶の存在を知ったのは
それほど昔の話ではない。

 ―「ティー・タイム」の項より

『英国レディになる方法』
(岩田託子・川端有子著・河出書房新社)

19世紀半ば、大英帝国が世界の覇権を握っていたヴィクトリア朝(1837〜1901)時代に生きた1人の裕福な中流階級の女性を想定、その一生を彩る「物」や「事」をふんだんな資料とわかりやすい文章で解説。「英国レディ」たちの日常が目の前に浮かぶように楽しめる。


今月のシマムラ
水害や地震で被災された方々に、心からお見舞い申し上げます。毎月、読者の方々からお便りなどを通じて励ましていただいていただけに、心が痛んでなりません。一日も早いご復興をお祈り申し上げます。

イギリス・おいしいものもあるんです!
ロンドン食べ歩きはこの本で

 当連載も、地球を半周ほどしたろうか。今度はどこへ「行こう」かな。ただ、正直いって優先順位の低いところもある。たとえば英国……だ。
 英国式朝食やアフタヌーン・ティーは、たしかに楽しい。が、ディナーとなるとねえ。インドにイタリアにチャイニーズ。つい、「英以外」に逃げてしまう。
 『英国レストラン探検』(前田己治子編・著・双葉社)によれば、英国料理が発達と洗練に出遅れたのには、17世紀の禁欲主義が背景にあるんだそう。不評をかこつのは、単調な味付けが中心な主菜のせい、とも。たしかに! 肉や魚のメーンはまず塩味のみ。アジアの舌はすぐ飽きる。「英国人の我慢強さというよりは、変化を好まない(単調さに強い?)性格があだになっているような気がします」と、筆者は語る。
 とはいえ、英国料理=まずいという思いこみから一歩も出ずにいるのはもったいないというものだ。揚げうなぎのパイにアナゴの煮こごり。フィッシュ&チップスくらいしか知らなかった庶民食にも、この本でいろいろあることがわかった。「オリエント急行でランチ」「ミュージアムレストラン」など、ロンドン食べ歩きガイドも充実。ラグビー取材がきっかけで英国にのめりこんだという筆者の、ユーモラスな語り口もいける。

笑いのセンスがキラリと光る。
女性の望みは大昔から全世界共通

  ユーモアといえば、なにごとにも笑いの余地を大切にするのが英国人である。「昨日のステーキがまずくて」といえば、世界のどこで話していようが「焼いたのは同胞に違いない」などと即答してくるような友だちが、私には何人かいる。
 諧謔(かいぎゃく)的、往々にして自虐的。その実態は、『イギリス人に学べ! 英語のジョーク』(クリストファー・ベルトン著・研究社)で見聞できる。おやじギャグに始まり、トイレジョークや墓石ジョークに「ウエイター・ジョーク」もありまっせ。「ちょっと君、スープの中にハエが入ってるよ」「ご心配なく。肉代は割増しいたしません」……。サムかったり、あまりにローカルでわからぬ笑いも結構あるのだが、英語の勉強を兼ねて読むといいかもしれない。
 さよう、食における優先順位は低いものの英文化圏、個人的には結構気になっている。西欧近代=英文化、という面で、良くも悪くもね。ゆえに最近のMYブームは『英国レディになる方法』(岩田託子・川端有子著・河出書房新社)。19世紀英国・中流階級の女性がどんな一生を送ったかについて、豊富な図版や写真で楽しく学べる。
 インスタント食品、生理用品、冷蔵庫。みな、100年以上前にもう生まれていたのだった! テディ・ベアや、ハーレクインに連なる「ロマンス小説」の大流行、そしてダイエット。「リバウンドしません。害もありません、極秘でお届けします……」などというあやしげなやせ薬の広告に大笑い。女の欲望というのは古今東西、案外変わらぬものらしい。

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