島村麻里 Shimamura Mari
1956年東京生まれ。大学卒業後、メーカー、放送局勤務を経てフリーライターに。読書と旅行、食べることをこよなく愛している。新潟日報などの新聞や雑誌に書評やコラムを執筆。著書は「アジアン・リゾートに快楽中毒」(講談社)、「本日のへなへなくん」(角川文庫)、「地球の笑い方」(講談社文庫)など多数。

『オリンピック・トリビア!』
(満薗文博著・新潮文庫)

オリンピックにかかわる「汗と涙と笑いのエピソード」が満載。読めばますます五輪観戦が楽しくなる。


今月のシマムラ
夏に強いはずの私が、今夏はかなりバテております。キュウリ、ナス、トウガンなど、「冷やす系」の食事で乗り切るつもり。皆さまもどうぞご自愛下さい。

番外編・オリンピックがより興味深くなる「トリビア」本
 当コラムが載るころには、アテネ五輪も終盤戦。どんなドラマが生まれているだろう。
 当方、7歳だった64年東京大会以来、じつはかなりの五輪ミーハーである。各種「副読本」を取りそろえては、毎度エキサイトしてきた。イケメン発掘。ま、これが主目的ではあるんですけど。
 『オリンピック・トリビア!』(満薗文博著・新潮文庫)は、ベテランスポーツ記者によるよりすぐりのトリビア101発!「選手村ができたのは、第8回パリ大会。わずか4人しか入れないバラック建てだった」「五輪に欠かせない鳩が、『聖なる焼き鳥』になった大会がある」「銀メダルと銅メダルを、半分ずつくっ付けたメダルがある」……。へえ、そうだったのか。観戦の合間に、飲み屋の話題に、おつまみ感覚で楽しめる。
 私のお気に入りトリビアは、1912年ストックホルム大会の故金栗四三氏。マラソンに出場したが、熱射病で失神&落後、付近の農民に救助されたものの行方不明扱いに。その55年後、同地での記念祭に招待された氏は、ゴール手前から少し走って、見事“完走”した。「長い道中でした。途中で孫が5人もできました」と、スピーチしたそうだ。

古代ギリシャ・ローマ料理にギリシャワインで「いざ、アテネ!」
 記録だけが歴史ではない。メダル獲得者や表彰式で流れる国歌だけが五輪を彩るわけでもない。
 『国のうた』(弓狩匡純著・文藝春秋)は、世界87カ国の国歌を集めた。各国の公用語による歌詞と和訳、国歌誕生のエピソードなどを一覧にした、これまた観戦の友だ。
 87カ国中、相当数を占める好戦的、愛国的な歌詞! やっぱり「アッラー」が連呼されるのね(イスラム圏)、メロディーは聴き慣れているが、ここまで血なまぐさかったのか!(フランスほか)、などなど、これだけ多くの国歌を眺めれば、こういってはなんだが、「どこも必死なのね」などと、苦笑すらこみあげてくる。そんななか、「モーゼル川に沿った香り高いぶどう畑では天が我らにワインをもたらす……」と歌う、ルクセンブルグ大公国なんか、私は好きですけど。うまいモンでアピールする国歌が、もっとあってもいいのにと、思う。
 そう、五輪TV観戦にせよ、私の場合、結局は飲み食いを伴わずにはありえない。『古代ギリシア・ローマの料理とレシピ』(A. ダルビー他著・今川香代子訳・丸善)はなんと、あの時代の食卓を、現在可能な方法で再現しようと試みた、超ワクワクな一冊である。
 「魚介類の団子、クミンソース煮」「エビのハチミツソース和え」「甘いチーズケーキ」「塩味のチーズケーキ」……!! 読めば紀元前が、なんと近く感じられることだろう。
 ギリシャワインとうまいフェタ・チーズのひとつかみ。たとえ入手したのがそれだけでも、本を友にすれば、アテネTV観戦は“供宴”となる。「メダルにからむ日本勢」へと偏る一方なテレビ中継だけでは、昨今、けっして満腹になれないのでもあるからして。

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