島村麻里 Shimamura Mari
1956年東京生まれ。大学卒業後、メーカー、放送局勤務を経てフリーライターに。読書と旅行、食べることをこよなく愛している。新潟日報などの新聞や雑誌に書評やコラムを執筆。著書は「アジアン・リゾートに快楽中毒」(講談社)、「本日のへなへなくん」(角川文庫)、「地球の笑い方」(講談社文庫)など多数。

『ホノルル食堂』
(藤沢セリカ著・マリン企画)

バリエーション豊かなハワイアン・フードのレシピ満載。ハワイと料理に対する著者の愛情が感じられる1冊。


今月のシマムラ
sashimiを食べるのは日本人だけじゃないんですね。ハワイ、フィリピン、ペルーなどなど、「海づたい」に共通する食文化にワクワク。で、暑気払いと称してタコのポケなどこしらえてはまたお酒が……(苦笑)。

ハワイ・「帰りたい」気持ちにさせる
“老舗”の地はおいしいもので満ちている

 最近周囲では、「ハワイに行きたい」という声が高まっている。まだの人も、何度か出かけた人もそろってだ。
 そう。バリやプーケットもすてきだけれど、ハワイにはどこか、“回帰願望”がくすぐられる。初心者もベテランもまっすぐ受け止めてくれる「老舗」ではのおおらかさだろうか。
 食べものにしても、「また行きたい」である。和洋中にエスニック、およそ食べ歩きには困らない外食事情もさることながら、島々の食文化は実際、きわめて多種多様。『ホノルル食堂』(藤沢セリカ著・マリン企画) では、日本の自宅で作れるおいしいハワイごはんのレシピを、豊富に紹介している。
 「マグロのポケ(“づけ”ハワイ風)」「(豚肉をバナナの葉などで包んで蒸す)ラウラウ」「マカダミヤナッツパイ」。ポリネシア、アジア、そして米国の文化が出会いを重ね、独自の味を花開かせている。圧巻は、「スパムむすび」。沖縄でも多用する缶詰の「ポーク」を、ごはんに「当てて」、大胆にもノリ巻きにしちゃう! そういえばハワイごはんって、どこか沖縄にも通じてる。
 海づたいに、いろんな人々が流れ着いてきた歴史もあるんだろう。先住ハワイ人、日系、中国系、フィリピン系。私がハワイに行くと、日系の友人宅でごちそうになるが、出てくるものはスシにラウラウにベークドビーンズ。調味料やスパイスの使い方も、楽しくファンキーにごた混ぜだ。余談ながら、昔友人のお母さんがくれたハワイ家庭料理本は、ページがぼろぼろになったいまも、活用している。

ファミリーでも、1人でも楽しい
奥深い魅力を持つ島

 『ハワイからのおいしい手紙』(東菜奈著・ポプラ社)は、子ども向けの絵本だ。将来の夢はシェフ、というハワイに住む11歳の日系少年が、日本の友だちにあててさまざまな料理を紹介する、との設定なのだが、これ、おとなが読んでも結構イケる。「エビのテリヤキ・サソリ風」なんて、思わず作っちゃいましたぜ。ハワイの歴史や生活文化(ココナツの活用法など)の解説も充実しており、ファミリーで訪れる人にとっては、旅行の予習・復習としておおいに役立つ。
 となれば、“御大”にもぜひ、ご登場願わなければね。『ハワイイ紀行(完全版)』(池澤夏樹著・新潮文庫)は、あの島々を愛する人にとっては必読である。旅行ライターとしてでなく、あくまで一個人として入れ揚げた結果、完成したのは文庫本にして500ページ強という壮大なる一冊。サーフィンやフラなど、一見、観光客にも入りやすい事項の裏に、どんな事情や歴史がひそんでいるのか。著者の目線と共にその先をたどれば、「知らなかった」「だけどぜひ知っておきたい」ハワイが、ぱっくりと、口を開けている。
 より奥深く島々を知れば、今度出かけるときにはもっと、親しく感じられるはず。食もしかりだ。その意味でリピーターこそ、もっと読書にふけりたい……って、だれより自分のことなんすけどね。

戻る