島村麻里 Shimamura Mari
1956年東京生まれ。大学卒業後、メーカー、放送局勤務を経てフリーライターに。読書と旅行、食べることをこよなく愛している。新潟日報などの新聞や雑誌に書評やコラムを執筆。著書は「アジアン・リゾートに快楽中毒」(講談社)、「本日のへなへなくん」(角川文庫)、「地球の笑い方」(講談社文庫)など多数。

『しあわせの沖縄料理』
(岩谷雪美編著・PARCO出版刊)

おいしくて体にもよい沖縄料理の数々を、沖縄に生まれ育った4人の女性調理人が紹介する。沖縄のアンマー(沖縄言葉で“お母さん”の意味)が作る家庭料理から、アメリカンフードとミックスされた新しい味まで、パワフルなレシピがいっぱいだ。


今月のシマムラ
3・4月に出る2冊の本の最終チェックに追われています。立て込むほどに料理欲がつのる、というのは逃避でしょうか? 引き続きたくさんの応援ありがとうございます。04年もどうぞよろしく!

沖縄・これぞ真のスローフード!
料理欲も旅行欲もそそる本

 沖縄帰りの友人から、スーチカーが届いた。豚肉の塩漬けだ。さっそく台所に立つ。
 ゆでて塩気を抜き、細かく刻んでフライパンでチリチリ。ついでにニンニク片もチリチリして生野菜にかけ、オリーブ油とレモンであえてみたら、おお! これは、かつて南仏で病み付きになった「サラド・ペザンヌ」(田舎風サラダ)ではないか! 
 イタリアでもパンチェッタと呼ばれ、多用される塩豚は、沖縄でも伝統食としていまに伝わる。いやいやそれだけではない。唐辛子にふんだんな野菜、ピーナツをさまざまに加工した料理、豆腐、昆布と、沖縄料理は、個人的に「好き系」な食材であふれている。
 『しあわせの沖縄料理』(岩谷雪美編著・PARCO出版)にスーチカーの作り方が出ていたので、今度は自作に挑戦するぞ。おなじみのゴーヤーチャンプルーはもちろん、この本には家庭の味を中心にしたオキナワン・レシピがいっぱい。昨今ヤマトでも大人気のタコライス、酒好きには大受け必至のトーフヨウ(豆腐を泡盛やこうじで発酵・熟成させた珍味)デイップなど、おお、こういう食べ方があったか! と、料理欲がおおいにかきたてられる。
 『聞き書沖縄の食事』(日本の食生活全集47・農文協)。こちらは、昭和初期の食生活について各地の「おばあ」方からていねいに取材した本である。
 ぐるくん(たかさご)、とうぶー(とびうお)などを用いたかまぼこづくり。豚の血の保存法。いも類の多彩な展開法。ばしょうの葉に包むお弁当。胃腸が弱るとにがなのしぼり汁をきゅっと飲む……。
 那覇から与那国まで、女性たちがいかに、知恵をしぼってバラエティー豊かな食卓を整えていたかが語られ、読み物としてもワクワクする。専門家による解説も充実。見かけ倒しのスローフード本が増えるなか、こういう仕事こそもっと注目されるべきだ。

知れば知るほど魅力が増す沖縄
現地を訪ねて味わいつくしたい

 『オキナワなんでも事典』(池澤夏樹編・新潮文庫)は、沖縄の姿をコンパクトに知り尽くすには最適だ。12年前の単行本がCD-ROM、WEBと変化&成長を遂げ、今度は文庫になったという。
 歴史、伝統、芸能、風俗などにまつわるエッセーを寄せたのは、池澤氏をはじめ、沖縄在住、在外のなんと102名。泡盛について椎名誠氏が、シブイ(冬瓜)について目取真俊氏が(そして離婚率について上野千鶴子氏が)語るという、なんともゼータクな1冊だ。
 沖縄へは、学生時代に初めて行った。当時車は、まだ右側通行だった。
 石垣や西表にも足を延ばし、ウミヘビからブルーシールのアイスクリームまでなにを食べてもおいしく、3週間近くふらふらした。けれどもじつはそれっきり。食い意地と知りたい欲とがそれなりに“育ち上がった”いまこそ、じっくり再訪し、堪能し直したいものである。

戻る