島村麻里 Shimamura Mari
1956年東京生まれ。大学卒業後、メーカー、放送局勤務を経てフリーライターに。読書と旅行、食べることをこよなく愛している。新潟日報などの新聞や雑誌に書評やコラムを執筆。著書は「アジアン・リゾートに快楽中毒」(講談社)、「本日のへなへなくん」(角川文庫)、「地球の笑い方」(講談社文庫)など多数。

『ロシアは今日も荒れ模様』
(米原万里著・講談社文庫刊)

ロシア語通訳にして名エッセイストである著者が、幼少時より知り尽くしたかの地について語りつくした1冊。悪魔と天使が同居するかのようなロシアという国と、そこで暮らすたくましい人々の魅力がしっかりと伝わってくる爆笑エッセーである。


今月のシマムラ
グルジア産は、シャンパンや紅茶も美味! 政治の舞台で最近また騒がれていますが、黒海付近っていっぺん、ぜひ行ってみたい!

ロシア・初回は新潟から飛びました!
懐かしい思い出はロシア料理とともに

 「グルジアのワイン、懐かしい!」
 クルーズ船のパーサーだった人と、先日そんな話になった。しんまで深いルビー色、どっしりしたその味わいが忘れられない……。
 以来、「あのへんの味」が恋しくなっている。寒くなってきたことだし、これはビーツを手に入れてボルシチでも煮なければ!
 90年と92年、崩壊をはさんで旧ソ連に計7週間ほどいた。カザフスタンを中心に、モスクワやタシケントにも行った。そうそう、初回は新潟からハバロフスクに飛んだのでした。
 イクラやキャビアどっさり載せた黒パン、キエフ風鶏カツレツにシャシュリク(アラブ風焼き肉)、ペリメニ(シベリア風水ギョーザ)にブリヌイ(ロシア風クレープ)、そして各地に伝わる自慢のボルシチ……。
 崩壊前後の混乱とモノ不足のなかでも、目を見張るほどのごちそうが並び、かの地の食文化の豊かさに驚嘆した。飲みっぷりについてもだ。ちなみにグルジア産ワインは、ウオツカの一気飲みで半死半生な身を救ってくれた。「あっちにかえて!」とボトルを指差してなんとか生きのびたという、貴重な飲み物だったんである!
 『ロシア料理・レシピとしきたり』(荒木螢子著・ユーラシア・ブックレットNo.8・東洋書店刊)は、懐かしさを料理欲へとつなげてくれる。
 なぜロシアにはきのこ料理が多いのか(森林が豊富)、マイナス20度の冬に備え、シベリア人は家族全員でペリメニを作り、冷凍保存した……。多様な気候と文化の下で人々が働かせた、食に対する知恵の数々にうなる。同じ著者による続編『ロシア料理その2・中央アジアからバルトまで』は、ウズベクやカザフなど、イスラム圏の料理も幅広く紹介。手打ちめんのラグマンなどは、シルクロードの中間地点ならではの象徴的な食べ物だ。

笑って、うなって、考える
ロシアとロシア人に関する2冊

 さて、ボルシチが煮える間はあの人に笑わせてもらおう。“ロシアもの”といえば米原万里さんである。
 ゴルバチョフ失脚、エリツィンへべれけ。連邦崩壊をはさむ激動期を主につづった『ロシアは今日も荒れ模様』(講談社文庫)が、個人的にはお気に入りだ。
 ロシア人とウオツカの宿命的関係、自虐的な小ばなしが死ぬほど出回ること、過激さとズボラさを兼ね備えた人間性……。さえたユーモアとともに語られる数々のエピソードに歴史の大転換という時代の脈動が加味され、爆笑しながらも考えさせられる。ほんの少しだがあのころをカジッた者にとって、たまらない一冊だ(拙著でなんですが、『地球の笑い方』で当時のゴタゴタに触れてます)。
 ならば、『ロシアについて』(司馬遼太郎著・文春文庫)で、日ロ関係史をカジッてみよう。「この巨大な隣国をどう理解するか」を、歴史を通して考え続けた著者。はたして「ロシア」は近くて遠いのか?読めばそんな思いにもかられる。
 ただ、酒と笑いを愛することにかけては世界有数。わたしが知る

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