島村麻里 Shimamura Mari
1956年東京生まれ。大学卒業後、メーカー、放送局勤務を経てフリーライターに。読書と旅行、食べることをこよなく愛している。新潟日報などの新聞や雑誌に書評やコラムを執筆。著書は「アジアン・リゾートに快楽中毒」(講談社)、「本日のへなへなくん」(角川文庫)、「地球の笑い方」(講談社文庫)など多数。

『インド家庭料理入門』
(ロイチョウドウーリ・ジョイ&邦子著・農文協刊)

インド人のジョイさんと信州出身の邦子さん夫妻が教える簡単にできるインド家庭料理。古くから伝わるアーユル・ヴェーダ(「生命の科学」という意味の伝承医学)に基づき、体調や生活のリズムに合わせて選んだスパイスを駆使した料理は「インド料理は複雑で面倒」という概念を打ち壊してくれる。

この本の著者夫妻とは旧知の間柄という新潟市在住のイザーク・マティアスさんは新潟市西堀通4番町の南インド料理レストラン「プージャ」TEL.025(223)9225のオーナーシェフ。南インドのカルナタカ州ウドゥピ出身のイザークさんおすすめメニューは、ウドゥピの特製料理「マサラドーサ」(米と豆の粉からできたクレープ。中に味付きポテト入り。2種類のソース付き)。ほかでは味わえないおいしさだ。


今月のシマムラ
10月にようやく夏休み。シンガポールのリトル・インデイアで、つかの間疑似インド体験&食い倒れの予定です。

インド・広がり続ける食い意地!
旬の素材を生かしたヘルシー家庭料理

 のめり込む“食域”。ここ数年は、インド方面が止まらない。
 デリー近辺に一度しか行ったことがないくせに、食い意地は広がる一方だ。各種スパイスや挽(ひ)き割り豆などの食材を軽く2年分は常備、ステンレスのお皿なんかも集めている。
 『インド家庭料理入門』(ロイチョウドウーリ・ジョイ&邦子著・農文協刊)。この本がいけなかったのだ。
 ベンガル出身のジョイさんと信州出身の邦子さん夫妻が紹介する「うちメシ集」である。「ぶりのアラのカレー煮」「長ネギと煮干しのカレー」など、インド料理といえばタンドリ・チキンにナーンが付いて……くらいの発想しかなかった当時のわたしは、目からウロコのカルチャーショック。インドの人たちがおうちで食べているのは、旬の食材を生かした簡単でヘルシーな料理なのだった!
 それでいて奥深い。漢方と同じく「医食同源」の考え方が根本にあり、寒い日にはチャイ(インド式ミルクティー)にブラックペパー(!)を入れる、夜食にはスパイスを水でこしてから使う、などなど、気候や体調に見合った調理をする……。中国四千年も深いけど、アーユルヴェーダも負けてまへん。合間に語られるジョイ&邦子夫妻の生活記も楽しくて、何度繰り返し、読んだかわからない。
 それからは一直線。旅先でもあれこれ狙ううち、あっさり系の“南印菜食”が好みになった。取り込まれたのは、南インドからの移民が集まるシンガポールのインド街。バナナの葉に盛ったごはんの上に各種野菜カレーをがんがんかける、「ミールス」(定食、の意・ちなみに食べ放題!)にヤラれた。

肌荒れも便秘も解消するスパイスと旬の野菜
インドに向けての“出奔欲”は増すばかり!

 ところが、南印系を日本で外食するのは非常に難しい。国内のインドレストランは、シェフの多くが北部出身、タンドリ・チキンも北の料理なのだ。ならばもう、作るしかない。『カレーな薬膳』(渡辺玲著・晶文社刊)が、最近の強い味方だ。
 夏バテには「冬瓜のヨーグルトカレー」、更年期対策には「ほうれん草と挽き割り豆のカレー」などなど、季節の素材でちゃっちゃっと、そう、ほんの野菜いため感覚で作れるレシピが多くてうれしい。しかも、油はほんのちょっぴりでOKなのだ。
 スパイスと旬の野菜との頼もしき出合い。経験からご報告すれば、続けて食べてると肌荒れ改善しますよ、これホント。お通じ良くなります、これもホント。というか、和食でもなんでも、「旬の力」は侮れないってことなのだろう。
 欧州がほぼ収まるほどの地に、10億の民が暮らす亜大陸。まだまだ知らない多様な料理は、『インド、カレーの旅』(ミラ・メータ著・文化出版局刊)で予習中だ。東西南北の主要地域を食べ歩く写真のおいしさ加減に、よだれが止まらず。ああ、早く旅立ちたい! だけどせっかくなら、2カ月は行きたいもんなあ……作れば作るほど、“出奔欲”とのジレンマに今日も身をよじるのでありマス。

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