その人なりに、できることから
「世界とつながる」方法を探ってみました。
取材・文/本間千英子、桑原知子 撮影/渡邊久男、村井勇
ダルニー奨学金
1年間1万円の国際教育里親システム

赤石隆夫さん(右)と妻の咲子さん(左)が支援するラオスの少女・ヴァンさん(中央)。4人姉妹の末っ子で成績も優秀。中学まで夫妻で支援するという。2007年撮影
タイの東北地方、ラオス、カンボジアには貧困から基礎教育をちゃんと受けられない多くの子どもたちがいる。ダルニー奨学金は、これらの地域で教育の機会を失ってしまう子どもたちを支援するためにまれた。1万円で子ども1人の1年間の学費となる。主催するのは「一般財団法人 民際センター」。「民際」という団体名は、国と国を越えた「民と民との結びつきを」という思いからきている。現在までにタイで約25万人、ラオスで約5万人、カンボジアで約1700人の子どもたちに奨学金を提供した。
ダルニー奨学金では支援者を「ドナー」と呼ぶが、新潟にもドナー連絡会がある。その世話人である赤石隆夫さんは、1980年代に仕事で東南アジアを訪れ、現地のすさまじい貧困の実体に衝撃を受ける。帰国後「何か自分にできることはないか」と思っていたところ新聞記事でダルニー奨学金を知り、「教育の底上げこそが、子どもを救い、国を発展させることにつながる」という民際センターの考え方に共感しドナーとなった。現地の状況を知るための研修に何回も参加しており、「タイの都市部は活気がありますが、東北地方には国の発展に取り残された人たちが多くいます。ラオスやカンボジアは、すべての面で足りないものばかり」と話す。
奨学金はきちんと現地の子どもたちに届いているのか、また、支援することで逆に彼らの自立心を阻むことにはならないのか、という問いかけには「1万円のうち1500バーツ(約4500円)は子どもたちに直接とどきます。この額は決して十分とはいえませんが、教育を受ける大きな後押しとなります。また、足りない分は自分たちや地域・村でなんとかしようとする自助努力も促します。500バーツ(約1500円)は奨学金事業の運営費にあてられます。残額は子どもたちのためのさまざまなプロジェクトの経費や、事務局の経費がどうしても不足する場合の補填に使用させていただいています。事務局は安全・確実に子どもたちに支援金を届けるために、なくてはならないもの。そのシステムがないと、せっかくの善意の支援金が行方不明ということにもなりかねません。また子どもを支援すると、現地の親や周囲も子どもたちに学校教育を受けさせようという姿勢になります。地域の人たちは学校の先生を中心に協力してくれており、地域全体に向上心が生まれます」と答えてくれた。
新潟県には2007年時点で270人ほどのドナーがおり、人口比率から言えば全国でも多いほうだという。個人だけでなく学校関係の団体もドナーとして頑張っている。新潟ドナー連絡会は入退会自由で、現在25名ほどが登録。希望者が多ければ新潟だけで現地研修を行うなどの活動もしている。
支援を始めたことで気持ちが楽になり、生きる力にもなっているという赤石さん。今では妻もドナーで、夫婦で現地を訪れ、支援している子どもと実際に会ってもいる。「こういう奨学金があるとわかれば、もっと支援してくれる人も増えるはず。新潟ドナー連絡会として、これからも情報を発信していきたい」と話す。
ドナーには支援した子どもの写真と生年月日や家族構成などが記された証書のほか、現地の子どもたちの様子などが掲載された「ダルニー通信」が送付される。
幼いころに父を亡くし、家族を養うために必死で働く母を支えて家事のすべてをこなし、学校が休みの日には水汲みや農作業などでわずかな収入を得ながら「将来はもっと貧しい人に奨学金を提供できるようになりたい」と話すタイの少女。奨学金を得たことで学業を続けられ、優秀な成績を修めて日本の文部省の奨学金を得て日本留学を果たし、その後母国のラオスで民際センターラオス事務局に勤務している青年。「ダルニー通信」には、将来は地域のために貢献したいと望む奨学生たちのレポートが掲載されている。厳しい状況のなかでも諦めずに将来を見据える彼らの明るく、力強い笑顔は「年1万円で一人の子どもの人生を変えることができる」というダルニー奨学金パンフレットの言葉が嘘ではないことを証明している。
一般財団法人 民際センター ダルニー奨学金
〒162-0041 新宿区早稲田鶴巻町518 司ビル301
電話03(5292)3260 FAX03(5292)3510
http://www.minsai.org/
新潟ドナー連絡会
http://niidaren.hp.infoseek.co.jp/
支援方法/タイは中学1年から3年生まで、ラオスは小学3年生から5年生の卒業時まで、カンボジアは小学校4年生から6年生までの3年間を基本に、1回限りの1万円、1万円ずつ3年間継続、3年分3万円を一括振込みなどから選択して支援する。またNGO日本民際交流センターのホームページでは、ワンクリックで支援できるクリック募金も昨年からスタートした。現金以外にも書き損じはがきや未使用テレカ、使用済みインクカートリッジ、本・CD・DVDなどで支援可能。詳細はお問い合わせを。
新潟市内の高校の生徒たちによるダルニー奨学金グループ「燎原(りょうげん)の火」が2007年の年末、タイとラオスを訪れた際の写真。車イスなどを寄贈し、村人や生徒たちと交流した。子どもたちの生き生きした表情が印象的

